婚約破棄をした場合の結納金の返還義務
結納金は法律上「婚約の成立を確証し、あわせて婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情宜を厚くする目的で授与される一種の贈与であり、婚約解除の場合には不当利得として返還すべきである」とされ、結納金は婚姻の成立を目的とした贈与になりますので結婚が成立すれば結納の返還義務はなくなります。
婚姻が成立しなかった場合のケース
婚姻の解消が双方の合意により婚約を解消した場合には授与者(新婦側)は、結納金の返還を求めることができます。婚約破棄の理由が授与者(新郎側)の心変わりなどによる一方的なものであった場合、実際には、自己の都合で婚約を破棄した授与者(新郎側)が結納金の返還を請求してくるケースは少なく、仮に結納金の返還を求めてきた場合であっても、婚約の不当破棄を理由とする慰謝料請求権と相殺を理由に返還を拒むことが多いようです。
授与者(新郎側)の有責行為により女性側から婚約を破棄された場合はどうでしょう。
「破約の原因が専ら結納を交付した側にある場合においては、破約に対する制裁として、破約者は結納の返還を請求する権利を有しないとすることが、信義誠実の原則などに照らし結納を授受した当時における当事者の意思に合致するものである。 」「結納の授与者が自らの有責事由によって婚姻不成立の事態を招来したり、あるいは正当な事由もないのに婚約を破棄した場合には、信義則上、授与者はその返還を求め得ないと解すべきである。 」
としています。つまり、自らの責任で婚約破棄をしておきながら、結納の返還を請求することはできないという事になります。逆に女性側に否があった場合はどうでしょう。原則女性側による一方的な婚約破棄である場合は結納金の返還義務が生じます。ただし、婚姻破棄の原因が男性側にもある場合や婚約を破棄されたことで男性側が女性に対し暴力を振るった場合など、男性側の責任の比重が重い場合には、結納金の返還は請求できず、逆に女性側の責任の比重が重い場合には、結納金の返還を請求ができます。
「結納者及び結納受領者双方に婚約解消についての責任が存するときは、信義則上ないし権利濫用の法理からして、結納者の責任が結納受領者の責任より重くないときに限り結納等の返還を許し、より重いときはその返還を請求することはできないと解するべきである。 」
と判示しています。