婚約破棄
婚約破棄
男女間がお互いの意思で将来的に結婚の約束をしたのにも関わらず、一方の都合により一方的に婚約を白紙に戻すことを婚約破棄といいます。
婚姻は、当事者双方の合意のみに基いて成立しますので、婚約を解消する場合においても、当事者双方の合意によるものであれば、問題はありません。
婚約は当事者の口約束だけでも成立しますが、トラブル時には結婚の約束を口で言った言わないと水掛け論となる可能性が高いといえるので、相手から結婚の意思を表明したメールや録音などの証拠や、両親への挨拶、結婚式場や新婚旅行などの手配など結婚へ向けての具体的な行動があると良いでしょう
婚約を解消する正当な理由
婚約は、どちらか一方が婚姻の意思を喪失した場合には、いつでも自由に解消することができます。ただし、婚約解消の動機や方法などが公序良俗に反し、著しく不当性を帯びている場合には、損害賠償責任が生じます。
- 婚約者に不貞行為があったとき
- 婚約者が行方不明
- 婚約者が精神病者であったとき
- 婚約者に他に愛人や子供がいたとき
- 婚約者に精神病や遺伝性疾患がある場合
- 婚約者の性的無能がわかったとき
- 婚約者から虐待や侮辱を受けた
損害賠償請求について
婚約をした相手が不貞行為や暴力・DV・虐待・暴言、その他、婚姻を継続しがたい重大な事由があり、婚姻の本質に応じた共同生活の回復の見込みがなくやむを得ず婚約を解消する場合には、 相手に対する損害の賠償請求をすることが認められます。
裁判となった場合には原告はその争点に対し証拠を用意する必要があるのに対し、被告もそれを立証できる証拠を準備したほうが良いでしょう。
精神的苦痛に対する慰謝料
婚約を不当に破棄された場合に受ける精神的苦痛の代償として慰謝料を請求することが可能です。ただし慰謝料の請求を認められるためには以下の条件にあることが前提となります。
- 婚約破棄の違法性
- 精神的苦痛の存在
- 精神的苦痛と婚約破棄との因果関係
- 精神的苦痛の発生から3年が経過していないこと
財産的損害に対する賠償
婚約後、婚姻に向けて結納や式場の手配、新婚旅行の予約、婚約、結婚指輪の購入、新居の手配や家具、日用品などの購入など様々な準備を整えることになりますが、 これらに使った費用や結婚式場や新婚旅行のキャンセル費用などの物的損害や結婚をする予定で仕事を退職場合は退職しなければ本来受け取るはずであった給与、職場を変わったりした場合には前職との給与の差額などの逸失利益が請求できる場合があります。
- 結婚式や結婚披露宴の申込金やキャンセル費用
- 結婚式用の衣裳や衣服などの購入費やレンタル費
- 新婚旅行の申込金やキャンセル費用
- 結納金
- 婚約指輪費用
- 家具などの購入費用
- 仲人への謝礼金
- 新居購入費用
逸失利益
結婚に向けて会社を転職や退職していた場合、婚約をしなければ、そのまま会社で就労していたと考え、その際に得られるべきであった収入など
- 結婚を機に会社を退職した場合の給与
- 結婚を機に会社を転職した場合の給与の差額
慰謝料、損害賠償の方法
婚約を不当に一方的に破棄した相手に対し、慰謝料、損害賠償を請求する場合は、まず双方の話合いによる円満な解決を試みます。 相手が婚約を破棄したことの非を認めている場合には支払ってくれる可能性もありますし、いきなり内容証明や訴訟を起こして、相手の支払う気持ちを削いでしまう可能性もあるからです。 しかし話合いの場を設けたのにも関わらず手が話し合いに応じない場合や連絡が取れない場合には、内容証明により請求をします。
内容証明の送付により、相手が何らかのアクションをして来た場合には、示談、和解の可能性もありますが、それでも相手が支払う気がない素振を見せた場合や内容証明自体を無視して放置をした場合には、慰謝料請求、損害賠償請求の訴訟を提起します。
慰謝料、損害賠償の相場
損害賠償請求は、婚約破棄により実質被害を被った金額に対するものですので、相場というものはありません。 また無形で金銭換価が難しい精神的苦痛に対する慰謝料についても特に相場というものはありませんが、過去の例で見ると大体50万円~250万円前後が多く見られます。
また慰謝料の場合、つい感情的になって高額な慰謝料を請求してやろうと考えてしまいがちですが、お互いの話合いで解決をする場合には逆効果となり、解決するものもしなくなる可能性がありますし、実際裁判を行っても法外な慰謝料は認められる可能性はほとんどないでしょう。